こわい話。はっとりぃです。


僕の友人でね、仮にここではAさんとしておきましょうか。
彼が都心に引っ越すというので、友人2人と手伝いに行った時の話です。
彼一人が暮らすには不釣り合いなほど広い家でね、小さいけど庭もある。
「あーいい家だなあ。」「俺もこんな家に住みたいよ。」
皆口々に彼を羨みながら、段ボールを片付けていた。
そんなときだ。ふと、部屋の隅を見ると、妙な筒があったんですね。
長さは3mくらいですかね。茶色くて、ちょうど大人の拳くらいの太さでした。
丁度片付けにも飽きてきた私は、ベッドで寝転がって、なにげなーく棒を持ってみた。
するとね、急に、ぐーんと、棒が重くなったんだ。
あれ、おかしいな、さっきまでは自分一人で軽々と持てたのにな。
なーんてことはない、横をみると、もう一人の友人が一緒に棒を持っていた。
そのまま暫く、私と彼は棒でもって、重量挙げの真似事のようなことをしてたんだ。
すると「おーい、どうしたんだー。」と、他の二人もやってきた。
二人は私らの姿をみると、最初馬鹿にしていたものの、面白そうだと加わってきた。
4人で棒を持って寝転んで、重量挙げの真似事のようなポーズをとる。
「くだらないなー。」「まるで小学生のようじゃないか。」
私たちはすぐに飽きてしまい、棒を離して片付けに戻ろうとした。
ところが、棒が腕から離れない。
いや、離れないわけではないのだが、棒がグングンと私たちに、向かってくるのだ。
私たちは押しつぶされないように、棒を力一杯持ち上げようとした。
ところが、棒はさらにどんどん重くなってくる。
そのときだ、どこかから、笑い声がきこえてきた。
「…ヒ…イヒ…イヒヒヒヒッ…!」
Aさんだった。
彼が何かに魅入られたように、一心不乱に棒にぶら下がっていたのだ。
「おい、冗談はやめろよ。」
私は、ちょっと怯えたように叫んだ。
すると、横からまた、楽しくてしようがないといった声で。
「すげえ…ジェットコースターみたいだ…!」
「いや…まるでカヌーだよ!」
という、友人たちの歓声が聞こえて来るではないですか。
平日の昼下がり、あたりはまだ明るい時間です。
にもかかわらず、彼らは嬌声をあげながら、一心不乱に棒を掴んでいる。
私、どうしても怖くなって、そこで逃げ出してしまったんです。
「待てよH。」「どうしたんだ、一緒にやろうぜ?」「楽しいぞH~。」
背中から、彼らの私を呼ぶ声がしましたが、かまわず私は外に出ました。
でもね、彼らの笑い声は、それからもずっと続いていたんです…。
いい年の大人が、棒一本で、あんなに楽しそうにできるものでしょうか?
それともあの家に、なにか得体の知れないものが、憑いていたのでしょうか。
Aさんは、その後も何事もなかったようにその家に住み続けています。
でもね…私には、そのときのみんなの笑い声が、今も忘れられないんですよ…。
おやすみ。

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